ずっとキミしか見えてない
 そう、私は驚いていた。

 こんなかっこいい人が私をいきなり助けてくれたことに。

 ――いや、それだけではなかった。

 彼だった。

 間違いなく、眼前に現れた美少年は、彼だったんだ。

 八年前に、一緒に夜空の下で約束をした、あの時に彼に間違いなかったんだ。


「紗良! あー、びっくりしたー。ボールぶつかってないよね?」

「どこも怪我はない? 大丈夫?」


 安堵の顔をしている芽衣と彼に心配をされ、私は無言でこくこくと頷く。

 いきなり目の前にずっと捜していた彼が現れたことに、気持ちが追い付かずうまく言葉が出てこなかった。


「ごめんねー! 誰かボールぶつからなかったー?」

「はい、大丈夫でした」


 朝練をしていた野球部員だろう。

 申し訳なさそうに私たちの方へと駆け寄ってきたが、例の彼がそう言ってボールを投げ返すと、軽く頭を下げてグラウンドの方へと戻っていってしまった。

 そんな光景を、私は呆然としながら眺めていた。

 本当に彼だ。

 間違いない。

 見間違えるはずなんてない。

 だって八年間ずっと、毎日毎晩、彼のことを思い出していたんだから。

 忘れない様にって、あの時のことを頭に描いて記憶に刻み込んでいたのだから。
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