君と紡ぐ物語は、甘くて愛おしい。


貴哉くんの部屋は、私の部屋のカオスっぷりとは反対に、整理整頓されていて綺麗だった。


「何しよっか…」

「ねっ。特に考えてなかったや」


考えられなかった、が正しかったかも。

あそこまでフレンドリーだなんて、1ミリも思いもしなかったんでね、緊張してたからね。


「貴哉くん、漫画はよく読む?」

「それなりには。…あ、少年漫画しかないよ?」

「翔がいるおかげで、少年漫画はかなり読むよ」

「ああ、お兄さんいると、女の子でも少年漫画読むかー。何か読む?」

「うん!」


ベッドを背もたれにして、貴哉くんのオススメを読んでいくことに。

前から気にはなっていたけど、手が出せずにいた漫画。
翔が持っていないのは、単に予算が無かったのだろう。バイトしてるくせに!


彼と私の間ら辺に全巻積み重ねて、私は1巻から順に、貴哉くんは2巻から読んでいく。

しばらく読み進めていて、ふと思った。


「あー、なんかこういうのいいよね」

「ん?お話?」

「あ、そっちの話じゃなくて。彼氏の家で、彼氏の漫画借りて読んでるの。憧れてたっていうかさ」

「憧れ、めっちゃ謙虚だね?」

「こういう小さいのは、いっぱいあるでしょ」

「そうだけどさー…」


次の巻を取ろうと右手を伸ばすと、その手を握られた。


「貴哉くん…?」


彼はどこか熱っぽい、大人な表情を見せる。
まっすぐ私を見据えてきて、顔を近付けてくる。

反射的に目を閉じる。

唇がそっと、優しく重なった。


離れても、至近距離で目が合って。

相変わらず、綺麗な顔しちゃってさ。


「俺は、キスしたかった…かな」


さっきの、憧れるシチュエーションの話か。

ちょっと焦らしてたのは貴哉くんなんだけどな。


「好きだよ、飛鳥ちゃん」


囁くような、少し低めの落ち着いた声で突然言われる。

何だろう、体の奥がソワソワする感じ。

貴哉くんに、“好き”を伝えたい。
でも、言葉じゃ伝えきれない。

伝え方なんか考えるより先に、体が動いていた。


今度は、私からキスしてみた。


「んっ…!」


彼からしたら不意打ちだったようで、驚いたような声を上げる。


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