君と紡ぐ物語は、甘くて愛おしい。
ー飛鳥sideーー
そんな心配そうにしなくたって、ずっと一緒にいるのに。
ふと空を見上げる。
今日はよく晴れてたからな…淀んでなくて、澄んだ夜空だな。
「あっ」
「え?…忘れ物?」
「違う。ねえ、見て。月が綺麗だよ!」
私は空に浮かぶ満月を指差した。
「…前に、飛鳥ちゃん言ってたね。
満月見るの好きだって」
「うん。今日だったんだー、満月」
しみじみと見上げながら歩いていると。
「巡り逢いつつ影を並べん…」
「へ?」
「月ではなく、私を見て…って、意味らしいよ」
平安時代の和歌かな?
「月見ながらつい歩いちゃうじゃん、ちょっと危ないなーとか思いつつ」
「…まあ、そういうことなんだけど…」
「違うの?てか、貴哉くん見てたって、見入っちゃって危ないじゃん」
貴哉くんは、苦笑いとも取れる表情を見せる。
「じゃあ…。
あなたを温めてもいいですか?」
ええっ…?
巡り逢いつつ影を並べん…あなたを温めてもいいですか…?
あっ、そういうことか。
「貴哉くん、文系だったかぁ。
良かった、私もそこそこ文系で」
「伝わった?」
「伝わったけど、私シンプルに月の感想しか言ってなかったからね?」
「うん、そうだろうなって思いながら言ったよ。
…ちょっと、月見すぎ!って思ったのもあるし」
確かに、周りに不注意だったかもだけど!
「…飛鳥ちゃん。大好きだよ」
「貴哉くんは、これでもかと伝えてくれるね」
「付き合うまで言えなかった分、いっぱい伝えたいんだ」
想われすぎて、幸せだな。
「私も、貴哉くんのこと大好きだよ。
いっぱい、一緒にいようね」
そう言うと、貴哉くんがギュッと手を握り返して、優しく微笑んでくれる。