3月生まれの恋人〜Birthday present〜
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薄暗い春の夕方

開店準備が終わるのを見計らうように
店ののれんが揺れた



『昨日のツケ

払いに来たんすけど、先輩』



相変わらず
目を見張るほどのイイ男ぶりな柊がそこに立っていて驚いた



『なんで、今頃こんなとこいんだよ?オマエ』



昨日の話だと
今日は確かコイツの誕生日で




柊がこよなく愛する、スペシャルラブリーな彼女と

熱々な夜を迎える予定だったんじゃ?



『もしかして、まさか振られたとか……』



数年会わなかった間に
幾分キャラクターが変わった感のある柊

昔の強気は何処へやら
今は一途な恋に身を燃やす少々痛い、フツーの青年



『振られてねーし!』



ガタッと音を立てて柊が椅子を引く



『座って、ゆづ』



ひとつ前のセリフとは『全く』違う声色で、柊は背中の後ろへと目をやった



『あの、お邪魔します』



おずおずと柊の背中の向こうから出てきた女の子は


クリスマスの夜柊が連れてきた

コイツの大本命



『うおっ?!

ゆづちゃん、久しぶり!』




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