極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
「どうしたの?」

「さっきの坂本の言葉よ。『怒るんじゃなくて労うのが先だ』からの、『なにがあっても負けるなよ』。昔から坂本のことはいいやつだと思っていたけど、本当にいい男すぎる」

「光美……」

 え、ちょっと待って。これはもしや、ついに大の長年の想いが実る時がきたの?

 期待で胸が膨らむ中、胸元を押さえていた光美は、今度は腹部を擦った。

「ん? ちょっとトイレ行ってくるわ」

「あ、じゃあ私も」

 トイレでなら大に聞かれないか心配することなく、色々と詮索ができる。

 彼女とともに立ち上がり、トイレへと向かう。その道中、光美は「さっきの坂本は、ちょっとカッコよかったなー」なんて言うものだから、思わず「それは恋じゃないかな!?」と言いそうになってしまった。

 私が言うものじゃない。光美自身が恋だと気づかなければ意味がないよね。ましてやふたりは、長い時間友人関係を築いてきたのだから。

 トイレを済ませて手を洗っていると、遅れてすっきりした顔で光美が出てきた。

「いやー、最悪。毎月恒例のものになっちゃったよー」

「そうだったんだ、大丈夫?」

「ん、平気」

 そう言いながら手を洗い、光美はあっけらかんと言う。
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