My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4


 それから私たち4人は薄暗い部屋の中で食事をした。
 と言ってもアルさんは水を少量口にしただけ。
 王子はやはりお母さんのことが気になって仕方ないのだろう、度々ドアの向こうを気にしながら黙々と料理を口に運んでいた。

 ラグもあれから一言も喋らず、私もそんな彼らに話しかけることが出来ず、酷く寂しい晩餐となった。

 料理を運んできてくれたのはあのレセルさんで、彼女はソファで横になるアルさんを見つけて驚いていたけれど、王子が一言「ティコラトールの飲み過ぎだ」 と言うと苦笑するだけで特に怪しむことなく納得してくれたようだった。

 セリーンがこの場に居ないのもアルさんが今動けない代わりに書庫へ調べものに行っていると言うと、

「それでこっちにも来られなかったんだね。またいつでも見に来るようにと伝えておくれ」

そう微笑み部屋を出て行った。

 私はそこでセリーンが彼女に厨房を見たいと申し出ていたことを思い出したのだった。

(セリーンが戻るころには、料理冷たくなっちゃってるだろうな)

 食事を終え、アルさんの向かいのソファに腰を落ち着けていた私は彼女の分の料理を見つめ小さく溜息をついた。

 ――今朝、あの小屋から街まで下りるのに大体30分。小屋からお城まではやはり30分くらい歩いた。
 隠し通路がどう伸びているかわからないが、往復でざっと2時間。
 それに王子のお母さんを探す時間も入れたら、彼女が戻るまでにはきっとまだまだ時間がかかるはずだ。
 そうわかってはいても、暗く静かな部屋の中では時間がとてつもなく長く感じられた。
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