My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4

 王子が足早に向かったのは入口からは丁度死角となる、階段の裏側。
 私とラグも灯りを追うようにそれに続く。

 階段の影になったそこも他の壁の棚と同じくびっしりと本が詰まっていて、特に変わった様子はない。
 隠し通路と言うからには、おそらく地下なのだろうけれど……。

 その時ふと、港町ルバートでライゼちゃん達と入った隠し部屋を思い出した。

(もしかして、ここも床が?)

 しかしどこにもそれらしき取っ手やへこみは無く、あのときのようにそれを隠すような布が敷いてあるわけでもない。

「持っていてくれ」
「は、はい」

 足元をじっと見つめていた私はその声に顔を上げ、彼が差し出していた手燭を受け取った。
 と、王子は目の前の本棚から2冊の分厚い本を引き抜き、丁度同じ厚さほど空いていた最下段にそれを仕舞った。

 まさかこんなときに本の整理ということはないだろう。

(ってことはひょっとして、この本棚に何か仕掛けが……?)

 少しドキドキとしながら王子の行動を見守る。

 彼は首から外した笛を手にすると、本2冊分ぽっかりと空いた隙間にその手を差し入れた。そして肘くらいまで入った腕をノブを回すように軽く捻る。すると、ガチャンという重い音が塔内に響いた。

「少し離れて」

 笛ごと腕を引き抜いた王子に言われ、私は慌ててその場から数歩下がる。

「貸せ」

 その声に振り向けばラグが手を差し出していて、私は言われたままに持っていた手燭を手渡した。

「あ、ありがとう」
「驚くなよ」
「え?」

 次の瞬間、ズズズ……という鈍い音と足元の振動に気付く。
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