My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4

29.仲直り

 ――ン。

 ――華音。

 まただ。
 また、誰かの呼ぶ声がする。

 お母さん?
 お父さん?

 それとも――。



 ゆっくりと意識が浮上する。
 でもなんだか眩しくて、身体もだるくて、なかなか目を開けることが出来ない。

 ――私、いつの間に眠ったんだっけ……?

 思い出しながら、身じろぎする。と。

「カノン?」

 間近ではっきりと聞こえたその声にぱっと目を開ける。
 視界に映ったのは見慣れた赤色。

「気が付いたか」
「セリー……っ」

 出した声がびっくりするほど掠れていて軽く咳き込む。

「ほら、水だ」

 差し出されたコップを身体を起こして受け取る。
 喉を潤すようにゆっくりとそれを飲み干していき、はぁと息を吐いた。

「大丈夫か?」
「うん、ありがとう」

 お蔭で今度はちゃんと声を出すことが出来た。
 セリーンは私からコップを受け取るとすぐそこの丸テーブルに置いた。

「ここは?」

 部屋の中を見回す。
 ベッドが二つ並んだ部屋はどうやら寝室のよう。

 ベッド脇の椅子に腰かけるセリーン以外に人はいない。
 ほかの部屋と同じ大きな窓からは眩しいほどの青空が見渡せた。

「客室だ。なかなか起きないから心配したぞ。もう昼過ぎだ」
「え」

 どうりで。このだるさは寝過ぎたとき特有のものだ。
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