恋は、二度目のキスのあとで―エリートな彼との秘密の関係―


誤魔化しの一切ない、北川さんらしい告白だった。
直球すぎる言葉を真正面から受けたというのに、衝撃は少なく、胸の真ん中にしっくりとハマるようだった。

まるで、それがパズルの最後のピースみたいに、ピタリと収まり……満たされた想いでいっぱいになった。

ふたりの間で繋がったままの手を、握り返しながら口を開く。
私の、答えは――。

「北川さんがそう言ってくれること、とても嬉しいです。たぶん、私も……」

惹かれている部分はあると思う。
北川さんと一緒にいると、見るものは澄んでたし、食べるものもおいしかった。穏やかでかけがえのない時間が、気づけば待ち遠しくなっていたほどだ。

大きな綺麗な手も、柔らかい微笑みも、落ち着く低い声も――。

……でも。それは確かだけど、瀬良さんとの決着がついたばかりの今、北川さんへの気持ちを声にするのはためらわれた。

「でも……北川さんが見ていた通り、私は今、やっと瀬良さんとの話をつけたところです。まだ割り切れない部分もある。気持ちが全然フラットじゃない今ここで、北川さんの気持ちに応えるわけには……」

「それでもいい」

ハッキリと言い切られ思わず黙る。
こういう、曖昧なことを北川さんは嫌いそうだ。それなのに……と驚いている私に、北川さんはふっと顔をほころばせた。

「〝先生〟と〝生徒〟の立場が変わるわけだ。これからは俺が白石のリハビリをしていく」

驚いたのは、言葉にもだけど、なにより北川さんがあまりに愛しそうに微笑むからだった。

こんな顔を向けられて、胸をときめかさない子なんてきっといない。そう思えるほど魅力的だった。


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