恋は、二度目のキスのあとで―エリートな彼との秘密の関係―
「ほんの少しでも俺に興味がある女性は無理だ。だからこうして白石に頼んでるんだろう。先に言っておくと、断られれば断られるほど俺はきっと白石に固執する。俺のことをなんとも思っていない証拠だからな」
〝うぬぼれすぎですよ〟という言葉が出てこないのは、本当に北川さんの言う通りだと思うからだ。
正直、この外見を前に少しの好意も持たないなんて無理だ。雑誌やドラマで主役をはるレベルの美形だ。どんなに興味がないって言ってた女性も、いざ会って話したら惹かれてしまう。
私だって……と考え、頭を抱えたくなった。
正直、私は瀬良さんに心を奪われていたせいで、北川さんを前にしても、目は奪われても少したりとも気持ちは揺れなかった。つまり……そういうことだ。
「泥沼じゃないですか……。来なきゃよかった」
私が断れば断るほど、私に固執するなんてどうにもできない。
だからげんなりしてそう零すと、北川さんは「まぁ、食べろ。ここの鯛めしは絶品だ」と何食わぬ顔で勧めてくる。
言われた通り口に運ぶと、ダシを吸いふっくらと炊かれたご飯が口のなかで解け、鯛の解し身と混ざり合う。上品でとてもおいしくて、今日何度目かわからない感動を味わっていると、北川さんが「これは、最後お茶漬けにしてもうまい」と急須を渡してきた。
「へぇ! やってみます」
どんな味の変化が起こるんだろう、とわくわくしながら薄く色づいただし汁のようなものを鯛めしにかける。
北川さんが絶妙なタイミングで差し出してくれたレンゲで一口食べてみて、思わず北川さんを見て笑顔を浮かべる。