ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋
「格好なんかつけなくていい。あの頃のようにまっすぐに彼女を追い求めなさいよ。」
『・・・・・・・・・』
学生時代の俺
頭の中に焼き付けた過去の彼女の面影を想い浮かべながら彼女を捜していた
まだ医師でない自分が医師としての立場なんて考えたりしなかった
彼女の主治医でいられないことにこだわるな
・・・そういうことなのか?
「きっといつか必ず、伶菜ちゃんはアナタを必要とする時が来るはずよ。」
それがいつなのか?
本当にそういう時が来るのか?
医師としての自分に対する自信を失った俺にその疑問を抱かせたまま奥野さんは伶菜がいるであろう外来診察室へ入って行った。
普段はあまり利用することのない、ドアストッパーをドアの足元に挿し込んでから。
それによって伶菜のいる診察室と俺のいる処置室の間にわずかにできた隙間。
そこから
「伶菜ちゃん・・・?伶菜ちゃん?! 伶菜ちゃん!!!!!・・・・奥野センセ!!!!!」
伶菜を揺り起こそうとしているような福本さんの声が聴こえてくる。
「とりあえず彼女をベッドに寝かせて、まずはバイタルの確認しましょう。」
即座に福本さんに指示を出し始める奥野さんの声も聴こえてくる。
「血圧、若干下がっています。」
「サチュレーションは?」
「そっちは問題なさそうです。」
「じゃあ、貧血症状が進んでいないか、採血しておこう。」
奥野さんと福本さんの歯車が噛み合い、テンポ良く動き出した外来診察室。
そこに自分の居場所はないような気がしたその状況に背中を向けた。
そこから逃げ出せないぐらい俺は放心状態になっていた。