ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋
Reina's eye ケース12:神の手を持つもうひとりの人物


【Reina's eye ケース12:神の手を持つもうひとりの人物】



『東京、着いた~!!!!!って、地下鉄ってどっち?』


私は真里との電話を終え、東京駅に到着した。
迷いながらも何とか地下鉄に乗り換え、入院する大学病院の最寄駅で降りた。


『意外と暑くないよね?』


地下鉄から地上に上がった私。
名古屋の湿気多めなジメジメした暑さに比べると、東京の暑さはさほどでもないなと一人涼しい顔をして歩き始める。

でも妊婦は暑がりなもので、しばらく歩いているうちにやっぱり暑くなり、汗ばんでしまう。
ハンドタオルで汗を拭いながら歩いていると、林に囲まれたクリーム色の建物が見えてきた。

ここで間違っていないかなぁと迷いながらも林の中にある遊歩道へ近付いていく。
蝉の鳴き声がどんどん大きく響いてきて、その中を歩いて行くと、東京医科薬科大学病院と書かれた銀色のプレートが掲げられた玄関が見えた。


『ここだ・・・』

ここから私とお腹の中の赤ちゃんは新しい人生を歩き始めるんだ


私は暫く立ち止まってその玄関のプレートを見つめていた。


「あの・・・そこ通らせて頂けますか?」


私は背後からそう声をかけられ振り返ると、車椅子に乗った老人女性と付き添いの老人男性が立っていた。


『あっ、すみません。』

私は慌てて身体を右側に避ける。


「あら~、妊婦さんだったのね。ごめんなさい。」

『いえ、大丈夫です。』

「暑くなってきているから大変だと思うけど、身体に気をつけて頑張ってね。ごきげんよう。」


その老人女性は一度私の左側で車椅子を止め、微笑みながらそう声をかけてくれた後、付き添いの男性に車椅子を押されながら病院の中に入って行った。

私も彼女達の動きにつられるようにして同じ病院内へ歩いて行く。



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