ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋



「君のお腹の中の赤ちゃんはラッキーだよ。」


私の頭の中が日詠先生のことで混乱している最中、
自分は日詠先生の父親だと言うその人・・・東京の日詠先生は
再び超音波の器具を手にし、私のお腹にそれをあてて操作しながら、さっきまでの話題はなかったかのようにそう呟いた。


「おそらく・・・この子の心臓は大動脈と肺動脈という2本の血管が通常の心臓の逆の位置にくっついている。完全大血管転位症という病気だ。」




突然聞かされた病名に今、自分が置かれている現状にさっと引き戻された私。


『・・・・・・・』


大動脈とか肺動脈とかよくわからない
でも逆についているとか、きっとあんまりいいことじゃないんだよね?



「難しい話だから詳しいことはまた後でゆっくり説明するけれど・・・・お腹の中のお子さんは生まれてからは酸素を含んだ血液が全身に流れにくい。」

『それってどういうことですか?・・・今、お腹の中では生きてるけど・・・』

「お母さんのお腹の中にいる間は胎児の心臓の中には動脈管というものがあるから、それを上手く使って血液は循環できている。でも、産まれたら誰でもその動脈管は3日程度で自然に閉じてしまうんだ。」

『産まれたら、動脈管ってものが閉じるって・・・そうなっちゃったら・・・』

「命に関わる状況になるだろう。」


名古屋の病院ではまだ胎児の病気は ”疑い” の段階だからと
詳しい診断名や説明は聞かされていなかった

だから今、初めて耳にした
赤ちゃんの心臓の形がおかしいことを・・・
その上、動脈管というモノも閉じてしまったら命に関わるって
どうなっちゃうの?
私の赤ちゃん、どうなっちゃうの??





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