ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋



「だから産まれてから一刻も早く、その動脈管を開けたままにする薬剤を点滴をしないと、助からないんだ。産まれてから心臓の異常を発見していては手遅れになりかねないから・・・」



手遅れになりかねないという言葉を聞いた瞬間、私は全身にかけてザワリと鳥肌がたった。


「この子の心臓の異常を産科医師が見つけたというのがラッキーだったんだ。いくら超音波の検査機器の性能がよくても、それを使いこなせる腕と観察力がなきゃ、見つかりはしないから。」



名古屋の日詠先生が見つけてくれたんだ
この子の心臓の異常を

日詠先生がつないでくれたんだ
この子の生きるチャンスを


日詠先生がくれたチャンスを
私がなんとしてでもつながなきゃ・・・・


この子のために
そして
”自分はできない” と言いながら、医師としても自信、プライドを捨ててまでもこのチャンスをくれた日詠先生のために・・・


なんとしてでも、つながなきゃ・・・



『先生お願い。この子・・・・助けて・・・助けて・・・お願い!!!!!』

私は急にベッドから起き上がり、東京の日詠先生の腕にしがみつきながら訴えた。



「ああ。この子、ちゃんと助けるよ。だから、君も・・この子と一緒に頑張るんだ。」


先生は私がしがみついた拍子に超音波の器具を落としてしまったが、慌てる事なく、力強く私の両腕を支えながらそう言ってくれた。

私も先生の言葉に必死になりながら何度も頷く。
頷く度に、私の太ももの上には涙がポタポタと滴り落ちた。


その時の私は
お腹の中の子供が助かって欲しいという想いで頭がいっぱいになり

名古屋の日詠先生が ”私の兄” というコトが本当なのか
東京の日詠先生が ”彼の父親” というコトが本当なのか

それらに対してじっくり考える余裕なんて全くと言っていいほどなくなっていた。

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