ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋
Reina's eye ケース19:新しいイノチの息吹


【Reina's eye ケース19:新しいイノチの息吹】



私は面会できると家族待合室まで呼びに来てくれた看護師さんに案内されながら祐希がいる集中治療室エリアへ入っていった。

NICU(新生児集中治療室)と同様にICU(心臓血管外科集中治療室)入り口でも感染予防のための手洗いとマスク着用を呼びかけられる。
毎日、祐希の世話でNICUに訪れ、手洗いを頻繁に行っている私は手際良くそれらを済ませ、看護師さんの後を追うように通路を歩いた。


ピッピッピッピッピッ・・・・

ピッ・・ピッ・・・・・・ピッ・・ピッ・・

キンコーン、キンコーン、キンコーン


いろんな方向から同時に聴こえてくる電子音。
規則正しくリズムを取っている音もあれば、リズムが不規則な音も。
一際甲高い警告音もその中に紛れている。

それらの音を耳にした私は両肩を竦めながら通路を歩き続けた。

通路を挟んで両サイドに大人用のベッドが並んでいるのが目に入ってくる。

祐希のベッドはどこ?
あの小さいベッドはどこ?


「サチュレーション87%か・・少し安定してきたかな・・・出血のほうは?」

「急激な増加は見られません。胸腔ドレーンいつ抜きます?」

「うーん、あさってくらいかな?」

「顔色随分よくなりましたね。でも、血液データ上ではちょっと貧血傾向かも。」

「輸血します?鉄剤で様子みます?」


大人用のベッドに寝ている患者さんの様子を見ながら通路を歩いていた私の耳に、何人かのお医者さんらしき人達の話し声が聞こえてきた。
その声がする方を向くと、さっき待合室の前を通った7、8人のお医者さん達が円陣を組むかのように集まって一点を覗き込んで話しているのも見える。

その姿を見た私は完全に気遅れしてしまい、今いるこの場所から一歩も動けない。



< 209 / 699 >

この作品をシェア

pagetop