ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋
「ま、お前が伶菜さんに言ってあげたことは間違いではないと思う。多分、誰か傍にいるって心強いだろうからな。それに、お前が彼女の傍にいてやりたいという気持ちはわからないでもない。折角、見つけ出したんだから。」
でも、忘れられない生徒のことをずっと気にかけている彼も、俺の気持ちは少しはわかるらしい。
「俺も伶菜さんと会える日を楽しみにしてるから、頑張れよ。」
『会わせるのはちょっと・・・』
「ここまで話をしておいて、会わせないとかはないだろ?」
『・・・・考えておきます。』
「じゃあ、またな。」
正直、入江さんに伶菜を会わせるとか心配だ
以前、入江さんの勤める高校の近くに用事があって行った際についでに学校に寄らせてもらったことがある
その際、学校の駐車場で女子生徒に彼が呼び止められ、スキですと告白されているところを偶然目撃してしまったことがある
その女性生徒に断りの言葉を告げる彼は大人の俺が見ていても完璧
そんな入江さんに伶菜が会ったら
彼のことを彼女が惚れないという保証なんてどこにもない
『伶菜を入江さんに会わせるとか会わせないとか・・・元々、俺にそんな権利なんてないだけどな。』
すっかり目が醒めた俺は、今度こそ遅刻するわけにはいかないとクルマに乗り込み、アクセルを踏んだ。