ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋
Reina's eye ケース23:はじまりの帰り道
【Reina's eye ケース23:はじまりの帰り道 】
私の妊娠中から出産、祐希の心臓手術を経て迎えた今日。
私達は東京医科薬科大学病院を退院する。
突然、日詠先生が迎えに来てくれたことに驚きすぎて、私は頭の中が混乱気味。
そんな中、うっかり泣いてしまった私を心配してくれたのか、
病院玄関から一歩出た今、日詠先生が祐希を抱っこしながら、反対の手で私の手を繋いで帰り道を導いてくれている。
不安いっぱいで辿り着いたこの場所から、新しい生活が待っているであろう地元名古屋に向かう帰り道。
東京へ来るときは祐希がお腹の中にいたとはいえ、たった一人だったことを想い出す。
無事に生まれてくるかの不安
生まれてから赤ちゃんがどうなるかの不安
なんで自分がこういう境遇に遭ってしまったんだろうという絶望感
それらをひとりで抱えて辿り着いたこの場所
でも、日詠先生の左手と繋がったままの自分の右手から伝わってくる温かさを感じる今
名古屋へ帰る今は
ひとりじゃない
三人なんだ・・・
帰ってからは祐希と二人きりになるけれど
・・・・???
二人きりになる??
そういえば私、日詠先生に
一緒に暮らすかどうかの返事をまだしてない!!!
いつ返事しよう
今から日詠先生と車で名古屋に帰るけど
いつ返事したらいいんだろう?
「キミは申し訳ないけどチャイルドシートに乗ってくれ、な。」
へっ?チャイルドシート?!
新幹線で帰る気満々だった私は、全く気にも留めていなかったチャイルドシートの存在に驚かずにはいられない。
一方、日詠先生はというと、抱っこしていた祐希にそう声をかけながら、メタリックブルーのワゴン車の前で足を止めて後部座席を開ける。
そして、彼は祐希を手際良くチャイルドシートに乗せてくれた。
その隙に日詠先生のものと思われる車に気を取られた私。
お医者さんって外車に乗っているっていうイメージがあるけれど、彼のクルマは街中でもよく見かける国産車。
それによって、こっそり親近感を感じてしまう。