ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋
Hiei's eye カルテ27:彼女の居場所



【Hiei's eye カルテ27:彼女の居場所 】



『今日は昨日休んでいたせいか、長かったな・・・』


退院した伶菜達を東京まで迎えに行った当日から続いた長い勤務を終えた午後9時半前。
いつも立ち寄る24時間営業のスーパーマーケットに寄った。

お菓子を持った子供の姿を見かける昼間とは異なり、仕事帰りらしい作業服姿の若い男とかスポーツクラブ帰りみたいな格好の女性などとすれ違う。

夕飯は栄養課から届けられた検食を食べたものの、寝不足だったのせいか少し脂っぽいおかずだった夕飯はあまり食が進まず、さっぱりとしたものを探した。


『お茶漬けでもしようか。確か塩鮭が冷蔵庫の中にあった。でも、梅干しのほうがいいよな。』

冷蔵庫の中で切らしていた梅干しを手に取る。


『かつお梅より、やっぱしそ梅。』

少し大きめの粒が入った梅干しも買い物カゴに入れ、レジへ向かう。


明日の朝食で使う食パンも買った。
その食パンに塗るジャムを3つも買ってしまった。

イチゴジャム、マーマレードジャム、そしてブルーベリージャム。
3つも買った理由。
それは伶菜の好きなジャムがわからなかったから。


『もしかして、好きなのはピーナッツバターだったか?』


伶菜の好みをまだ知らない俺は歩く度にレジ袋の中でジャムの瓶がぶつかり合う音を耳にしながらも、そんなことを考える。


『食パンも5枚切りを買ったけれど、6枚切りのほうがよかったか?それとも8枚切り?もしかして、朝はご飯派だったり・・』

俺の朝食でいつも御馴染みの食パン5枚切りが、伶菜にとって御馴染みじゃないかもしれない


『朝はごはんだったら、ジャム3つとか買いすぎだろ?』


ひとり買い物反省会をする俺は苦笑いを浮かべながら、自宅マンションの自分の部屋を見上げると、そこは一昨日までひとり暮らしをしていた時のように真っ暗だった。




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