ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋
こんな他愛のない会話でも、幸せを感じる
だって、兄だけど、好きな人に甘えられているから
そういえば、日詠先生
夕ごはん、何作ってくれるのかな?
私の頭の中ではペペロンチーノなんだけどな
冷蔵庫の中にガーリックも入ってたし!!
『さ、祐希!診察、行こっ!!』
日詠先生が作ってくれる夕ゴハンのことを考えワクワクしながらベビーカーを押そうとした私は、ふと自分の左側から視線を感じた。
そちらのほうへ振り向くと、そこには
白衣姿に黒いハイヒールを履いた背の高い女性が立っていた。
シルバーのクリップでまとめてアップしている明るめの栗色の髪。
キレイにお手入れされている桜色のネイル。
赤味が強めなグロスで唇がまとわれていて、上品なシャンパンとかが似合いそうな雰囲気なその人。
その人と視線がぶつかった私。
なぜだかわからないけれど自分の胸の中がモヤモヤする。
そして、その白衣の女性は相変わらず私の方をじっと見つめているものの、特に笑いかけてくることなく、私に向かって軽く会釈してからその場を立ち去ってしまった。
私、今の女の人、知らないよね?
なんかひんやりとした視線を感じてしまったんだけど・・・
気のせいだよね?
でも、凄くキレイな人だったな
オトナの色気もハンパない感じ
正真正銘のオトナのオンナ
女医さんかな?薬剤師さんかな?
それとも他の医療職種の人?
もしかして、私が妊娠中ここの病院に入院していた時に関わっていたかもしれない
「きゃっ♪」
『あっ、祐希、ゴメン。私達も行かなきゃね。』
さっきの胸のモヤモヤ感を抱えながらも、私は祐希の診察を受ける為に小児循環器科の外来診察室へ急いだ。