ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋
「もうすぐ現れるのかな・・?遠距離恋愛の彼女が・・・気になるぅ♪」
『誰の彼女が現れるって??』
その証拠に、背後から声をかけた俺のほうに振り返るやいなや、化け物を見たかのような顔をした彼女がいる。
なんで俺を見て、そんなにビックリするんだ?
ちゃんと約束していたんだけどな
「日詠先生!!もう着いたんですか?!」
それに驚いてる暇はないぞ
『お久しぶりです。』
お前の視線を釘付けにしていたらしい人物がすぐそこまで来ているのだから
「どーも。こうやって会うのはホント久しぶりだね、日詠・・」
『えっ?!日詠先生、知り合い???遠距離恋愛中の彼と・・・』
伶菜はまたもや化け物を見るかのような顔でそう呟いた。
それにしても
遠距離恋愛中の彼ってどういうことなんだ?
こっちが聴きたい
入江さんと知り合いだったのか?って
「キミが、伶菜さんなんだね。初めまして、入江っていいます。」
さっきから伶菜は入江さんのコトをじっと見ていたわけだし、
入江さんのこの ”初めまして” がなかったら
俺は変な勘違いしているところだったぞ
伶菜の天然な発言のせいでワンテンポ遅れたが、伶菜に入江さんを紹介した。
伶菜がまた変なことを考えていそうで、ちょっと気になったが、入江さんが誘ってくれたカフェへ向かうことになった。
そこは入江さんも名古屋に住んでいた時、当時付き合っていた彼女に連れて行かれたとこぼしていた店。
バイト先のイタリア料理の店で、料理の盛り付けの参考になるかもしれないからと俺も何度か連れていかれたことがある。
「そうだな、ケーキでもご馳走するよ。伶菜さん、行こうか。」
「ありがとうございます、ご馳走になります!」
ケーキ?
そんな時間か
産科医師としては、伶菜にはケーキとか脂っこいものをあまり食べて欲しくないが、まあ、何とかなるかと自分に言い聞かせた俺は目が覚めた祐希を抱っこしながら、彼らを先導する。
背後では楽しそうに入江さんと伶菜が会話している。
その会話の声が突然聞こえなくなったと思ったら、
「えっ?! パパ??? パパじゃなくて、私、彼の妹なんです・・・シングルマザーなんで居候させて貰ってるだけで。」
「伶菜さんって、妹さんだったんだ・・・てっきり日詠の結婚相手だと思ってたよ・・・アイツ、伶菜さんと一緒に暮らし始めたと話してくれただけだから。」
声が裏返った伶菜と驚きを隠せていない入江さんの声が聞こえてきた。