ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋
Reina's eye ケース34:ベランダで知った秘密
【Reina's eye ケース34:ベランダで知った秘密】
「伶菜、赤味噌だれって使い終わったっけ?」
『あっ、冷蔵庫の奥のほうへいれちゃいました。』
ホイップクリーム山盛りのシフォンケーキを無事に食べ終わり、
日詠先生だけでなく入江さんも一緒に自宅に帰ってきた。
「日詠、パソコン貸してくれる?」
「俺の部屋にあるノートパソコン使って下さい。」
入江さんは早速、はるばる名古屋までやってきてくれた彼の任務を果たそうと
日詠先生の部屋へ向かった。
その間に日詠先生と私は夕飯の準備をした。
「日詠、データ処理、この方法でいいだろ?・・・ん?美味そうだな。トンカツまであるし。」
書類を手にして私達のいるダイニングへ戻ってきた入江さんは驚きの表情を隠せていない。
無理もない。
日詠先生はスーパーマーケットに立ち寄ることなく冷蔵庫内にあったもので5品のおかずを作ってしまっていたから。
「入江さん、トンカツに赤味噌かける?ソースかける?」
「赤味噌でしょ。俺も餃子焼かないとな。」
「さすが元名古屋在住。もやしもちゃんとありますよ。」
「あ~それそれ。やっぱ餃子にはもやしを添えないとな。」
キッチンでの楽しそうなふたりのやりとり。
それはあまりにも絵になり過ぎて、映画を観ている気分にさせられる。
「さあ、餃子、焼けたみたいだし、食べようか。ビールにする?日本酒にする?」
片手にビール、もう一方の手には日本酒の小瓶を持って嬉しそうに笑う日詠先生をみて
私も気分が上がる。
彼らはお酒、私はオレンジシュースで乾杯をした後、
私は早速、お腹を空かし始めたらしい祐希にごはんを食べさせながら、目の前に並べられている大皿から小皿へ移し替え、もぐもぐとそのごちそうを口にした。
日詠先生と入江さんはというと、ごちそうをつまみながらお酒を飲み、ぽつりぽつりと話し始めた筈だった。
「あ~日詠のやつ、寝落ちしやがった。彼、昨日深夜勤務だっけ?」
『そうなんです。寝ちゃいましたね。』
祐希の授乳と寝かし付けを終え、リビングに戻った時には、
どうやら飲み過ぎた様子の日詠先生がソファーの上で眠ってしまっている。
私はリビングに居なかった入江さんの姿を探す。
その入江さんはというと、ベランダで一人立ったまま煙草を吸っていた。