ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋
Reina's eye ケース36:青空に隠された真実


【Reina's eye ケース36:青空に隠された真実】



病院の屋上にいた日詠先生に声をかけられずに、逆に看護師の福本さんに声をかけられた上に見せられた新聞記事。

それは

”産婦人科医師自殺、医療ミスが原因か?!:名古屋南桜病院”

今、自分が立っているココで起こったらしい事件らしき見出しだった。



【2月5日午前7時頃、名古屋南桜総合病院敷地内で男性が頭から血を流して倒れているのを近くを通りかかった通行人が発見し、すぐに同病院救命救急センターに搬送されたが間もなく亡くなった。

男性は同病院産科医師の久保正樹さん(28)。現在のところ目撃情報は寄せられていないが、同病院の建物の屋上には久保さんのものと思われる白衣が落ちており、そのポケットからは遺書らしきメモが見つかっているため、警察では自殺とみて捜査している。

2月1日の深夜、同病院に産気づいた妊娠34週の妊婦が救急車で運ばれた際、逆子であったにも関わらず、帝王切開ではなく経膣分娩で出産。その際、新生児の右腕には、分娩時に身体を強く牽引されたことによって生じたと思われる腕神経叢麻痺を発症していた。患者の家族は分娩時の久保医師の対応について不信感を募らせており、同病院では同医師と産科スタッフから詳しく事情を聞いていた最中だった。】



手渡された新聞の記事を読んだ私はすぐさま目の前に広がっている青空に目をやった。



その先生はここから飛び降りたんだ
私が自ら命を絶とうとしていたこの場所から

おそらくそれを知っているはずの日詠先生は今、どんな想いでそこに立っているの?

ただ、お父さんと会話してただけだと思ってたのに
一体、どんな想いでそこに立っているの?



「その妊婦さんの搬送依頼が入った時、日詠先生はちょうど緊急手術中で対応できず、仕方なく1回は受け入れ拒否していたの。でも日曜日だったから他の病院も受け入れ拒否が続いていて・・・再度ウチの病院に依頼が入った際に、久保先生が独断で受け入れてしまった・・・」

『・・・・・・・・・』

「彼はシニアレジデント2年目で、つまり昔で言う研修医を終え医師としてひとり立ちして2年目で仕事にも自信を持ち始め意欲的に業務をこなしていた矢先だった。」


福本さんは私の手から新聞紙を引き抜き、それをじっと眺めながらそう呟いていた。



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