ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋



「尚史の信念っていうのはそれだけなのか?」

「・・・・・・」


鋭い目付きの日詠先生のお父さんに対して、目力が感じられない日詠先生。
そんな彼らを、三宅教授も、福本さんも、そして私も、固唾を呑んで見守る。
そして日詠先生のお父さんである東京の日詠先生は小さく息をついた後、おもむろに口を開いた。



「そうじゃないだろう?お前は高梨が大切にしてきたこの病院の患者さん達を自分が高梨に代わって守り抜きたい、そうなんだろう?だからお前は産科医師になったんだろう?高梨のような産科医師になるために。」



高梨のような、産科医師になるため?
それって、日詠先生が産科医師を目指すきっかけになったその人が私のお父さんだったの?
私のお父さんって、プラネタリウムの研究員だったんじゃなかったの?



「ああ、そうだ。でも、僕は自分の信念だけのために、この病院の患者さん達に迷惑をかけることができない・・・医局員達の力がこの病院にはどうしても必要なんだ・・・・」

目だけではなく声にも力が感じられない日詠先生


「そういうことだ・・・日詠。」

二人のやり取りを引き裂くように冷たい口調で東京の日詠先生に声をかけた三宅教授


多分、この日詠先生の言葉はきっと彼の本意じゃない

どうしたら、日詠先生が私に話してくれた
”親父の信念を守り抜きたい” という想いを失わずに済むの?

日詠先生のあんな顔ももう二度と見たくない
”自分はできない” と苦しそうに私に言った時の彼の顔を

でも私には、どうすることもできない

私を救ってくれて、守ってくれている彼のために
私がしてあげられることが自分自身で見つけられない

悔しい
悔しいよ・・・お父さん・・・・



「尚史、諦めるな!! なぜ俺を利用しない? 俺は・・・俺はお前の父親なんだぞ!!」

なぜ俺を利用しない?なんてどういうことなの?


「ウチの、東京医科薬科大学の産婦人科の医局員をこの病院に派遣させる。」

「心臓血管外科教授のお前に、そんな権限はないだろう?」


冷静を装う心臓血管外科教授とその彼に現実を突きつけようとする産婦人科教授

傍から見ていても分が悪いのは前者のほう
やっぱり三宅教授の言う通りじゃない?
日詠先生のお父さんは間違いなく心臓血管外科の教授なんだから

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