ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋
Reina's eye ケース38:優しさあふれる夕ごはん


【Reina's eye ケース38:優しさあふれる夕ごはん】




東京の日詠先生に連れられて入った西鶴舞駅近くのカフェ。
そこで彼から、”日詠先生はウチの両親の実の子供ではなく、東京の日詠先生の子供である” という事実を打ち明けられた。

それについて東京の日詠先生が詳しく説明をして下さっている中、
色々な想いが込み上げたのか、言葉を詰まらせかけた彼。

そこに現れたのは、

「私が説明するわ、その後、私達に何があったのかを・・・・」

離乳食が載せられたトレイを手にした日詠先生のお母さんだった。


『・・・・・・・・』

彼女の凜とした雰囲気に圧倒されてしまっている私は自己紹介どころかまともな返事することすらできない。



「早紀、無理しなくてもいい。僕がちゃんと話すから・・・」


ますます心配度が増してしまったような東京の日詠先生の顔。
白衣を(まと)っている時の穏やかな雰囲気の彼とは全く異なる不安そうな顔。


「いいのよ。ちゃんと言葉にすることで自分自身の心の整理にもなると思うから・・・伶菜さん、聞いて下さる?」

『・・・・・・・』


正直なところ、私は彼女の話を聞くのが怖い。
話そうとして下さっている彼女にも、過去を想い起させてしまうことで、東京の日詠先生と同じように辛い想いをさせてしまうような気がして。

だから、彼女の声かけに、私はまた返事ができなかった。

でも、日詠先生のお母さんである早紀さんの ”ちゃんと話そう” という意志はかなり強いようで、指を組んだ手を机の上に載せながら私をじっと見つめてから口を開いた。




「子供を産んでから、3ヶ月で循環器内科に現場に復帰する・・それが、妊娠が判明した時、私が自分で決めた計画だった。医師としてのキャリアの空白期間をできるだけ短くするために、妊娠中も出産ギリギリまで仕事を続けたわ。だから、その計画を実行する自信があったの。」


出産して3ヶ月で現場復帰?!

私じゃ想像つかない
実際に出産を経験して祐希を育てているけれど、産後3ヶ月って他のことなんかじっくりと考えられないぐらい余裕がなかったような気がする



「でもね、出産は自分が考えていたほどそんなに甘くはなかった・・・産後の倦怠感で思うように身体が動いてくれなかったり、泣き続ける子供をどうしたらいいのかの知識は頭の中に入っているけれど、実際には上手に泣き止ませることができなかったり・・・できない自分が本当に許せなかった。」



できない自分が本当に許せなかった
私もその気持ちはよくわかる
私もNICUのベッドで寝ている祐希をなかなか抱っこしてあげられなかったりしたから


< 439 / 699 >

この作品をシェア

pagetop