ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋
Reina's eye ケース40:疼く傷跡
【Reina's eye ケース39:疼く傷跡】
深夜2時に帰宅して、私の肩におでこを乗せた後に高熱で倒れこんでしまった日詠先生。
その後、すりおろしりんごを食べ、薬を飲んだ彼はなんとかダッフルコートだけは脱いでベッドに潜り込み、あっという間に眠りに落ちたらしい。
夜中2回、私は彼の寝室へ忍び込み、彼の額のタオルを冷たいタオルに取り替えたけれど、彼は爆睡状態。
それに対して、今まで通り彼の妹のままでいようと決めたのに、相変わらず彼との関係について悶々と考えていた私は寝不足状態。
それでも翌朝、6時半になんとかベッドから這い上がって朝食を作ろうとキッチンに向かった私。
キッチンに繋がるドアを開けた瞬間、愕然とした。
「おはよう。」
『・・・おはよう・・ございます。』
「昨日は看病ありがとな。」
『・・・どういたし・・まして。』
「スクランブルエッグ食べるだろ?今日のは結構美味くできたぞ。」
夜中に帰ってきたばかりなのに
病人なのに
大人しく寝ていて欲しい
「カフェラテのミルクはローファットでいい?」
だから、病人なのにこんなときまで私の世話を焼かなくても
「朝メシできたぞ。今日、俺、出勤だから、先に食べていい?」
だから、朝メシできたって、病人なんだからそんなの作ってくれなくても
っていうか・・・
『しゅっ、出勤?!』
さっき帰ってきたばかりじゃない・・・
てっきり日詠先生は今日お休みだと思ってて、わざと寝坊してのに
しかもアナタ、さっき38度6分の高熱があった病人だよ?
医者の不養生・・・その言葉はアナタのためにあるのかも?!
「そう、出勤。よく寝たしね。」
『だって、先生、まだ熱あるんじゃ・・・んンン?』
私の口を塞ぐように放り込まれたのはホカホカのスクランブルエッグ。
『トロトロでおいし~♪ あっ、そうじゃなくて、先生、熱は?』
「おかげさまで37度3分まで下がった・・・・夜中2回もおでこのタオル変えてもらったし、林檎もよく効いたよな。」
『えっ、タオル交換したの知ってたの?あんなに爆睡してたのに?』
「まあね。“気付けっ” て伶菜からのテレパシーってやつを感じたから。さ、そろそろ出かけるかな。」
彼はいたずらっぽく笑いながら椅子から立ち上がり、身なりを整え、
「行ってくる。次帰ってくるのはあさってかな・・・あさっての夕飯は任せろ。五目ご飯と茶碗蒸しと・・・鯖の味噌煮もつけようか。」
ちょっぴり赤い顔で、まだ声もかすれているものの、明後日の夕飯の美味しそうな和食の献立をさらりと言ってのけて、颯爽と出かけてしまった。