ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋
Hiei's eye カルテ43:兄妹という曖昧な関係


【Hiei's eye カルテ43:兄妹という曖昧な関係】




「ママ、かって、かって~!!!!」

「ミニカー、この前、買ったばっかりでしょ?」

「だってほしいんだもん。」

「じゃあ、今度、ちっくん注射、頑張ったら買ってあげるわ。」

「やくそくだよ。」

「わかったわ。」


病院内で突然失神し、点滴をし終えた伶菜が帰宅した日の夕方。
声をかけてきた保険会社営業マンも立ち去った後、俺が向かった先。
そこは、いつも業務を終えた後に立ち寄るNICU(新生児集中治療室)に向かう前に、小腹が減って仕方がない状況をなんとかしようと足を運んだ病院内の売店。

そこで、幼児ぐらいの男の子とその母親らしき女性のかわいいやりとりを見かけた。
頬をぷくりと膨らませた彼が母親に連れて行かれる姿をこっそりと見送った後、彼が欲しがっていたミニカーを手に取って見た。


実在する乗用車を細部まで精巧に再現しているそのミニカー。
小さなそのサイズとはややミスマッチ気味の重量感が懐かしく感じる。

俺が幼い頃から人気があって、祐希もいくつか持っている、いわゆるおもちゃの世界でのブランドモノのミニカーだ。

『車種も半端なく多いから、欲しくなっちゃうんだよな・・・・。』

今、自分の手のひらの上に乗っているミニカーは、祐希が持っていないもの。
伶菜に、”祐希が欲しいモノをいつでも買ってもらえると思っちゃうから、おもちゃはできるだけ特別な時だけにして下さい” と言われている。


『また、伶菜に叱られるだろうか?・・・でも、今日はいいだろ?・・・伶菜が点滴している間、祐希は隣で大人しく寝ていてくれたんだからな。』


ミニカーを買ってもいい理由が見つかった俺は迷うことなくレジに並び、間食のメロンパンと一緒に購入した。
購入したメロンパンを食べた後に向かったNICU。


そこで気になる親子を見守ってから戻った産科病棟でパソコンにログインする。
すぐさま、院内で失神した伶菜のカルテを開く。
彼女の処置してくれたのは、ER(救命救急センター)の医師。


『ヘモグロビン値、一桁って、レバニラ食べてのんびり対応している場合じゃないよな。』


失神の原因を探るために彼女から採取された血液のデータを再度確認して愕然とする。


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