ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋


兄妹の関係で同居している今の状況
いつかこんな日が来るかもしれないと頭の中では想定していた

けれども、今日の今日まで、そんな前触れなんて全くなくて

いきなりスキだった人にプロポーズされて、入籍して、一緒に暮らし始める
だぞ?


「だから、今度こそ先生の・・・お兄ちゃんのもとから自立する・・・から・・・・」


心の準備なんて全くできていなかった
今度こそ自立するなんて言われることも・・・


「だからその前に、お兄ちゃんに甘えてみた・・。」

『・・・・・・・・・』


今のこの状況は俺の気のせいなんかじゃなくて
やっぱりサヨナラの予兆だったのか?


『だからか、お前が俺のコト、突然、お兄ちゃんなんて呼び出した理由は・・』


ずっと日詠先生と呼んでいた俺のことを
お兄ちゃんと呼んだことも・・・



伶菜にスキな人ができる
それは勿論あり得ること
そうしたら、ここから彼女が居なくなるのも当然だ


じゃあ、いざそうなると
どうなるんだ?


彼女らの賑やかな笑い声が消える
温かい食卓が消える
明るい部屋が消える

それらが消えるのは
ただ俺の元の生活に戻るだけだ

けれども、

祐希とじゃれ合ういつもの習慣がなくなるのは寂しい
そして
伶菜の傍に居られなくなるのは

寂しい・・・のか?



彼女の傍にいるのが俺ではなく
どこのどいつかわからない他人になる

それが現実になるかもしれない
それが寂しいという言葉が当てはまるのかどうかわからない
どうもしっくりこない気がする

じゃあ、なんなんだ?


多分、寂しいという言葉だけじゃない

彼女の笑顔に触れられなくなること
彼女の醸し出す温かい空気に包まれることができなくなること

それは

哀しい

そして



苦しい



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