ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋
名古屋医大の三宅教授の突然の呼び出し。
それは今が初めてではない。
以前は自宅に帰らなきゃいけない理由がなかったから、その呼び出しには大体応じてきた。
でも、今は自宅に帰りたい理由がある。
『新しい医局員の紹介なら、俺よりも部長のほうがいいんじゃないか?』
伶菜達と一緒に過ごす時間があとどれくらいあるのかわからない今
その時間を大切にしたい
そう思う
「父とウチの産婦人科部長・・・折り合いが悪いって、日詠クンも知っているでしょ?」
『ああ。』
「亡くなった久保クンのこともあるし、新しい医局員の適性は日詠クンにも見てもらったほうがいいって思っているみたい。」
確かに、いざウチに新しい医局員が派遣されることになったら、
その医局員が久保の二の舞にならないかと気になるだろう
伶菜達との時間を優先したいところだが、
その人物に会うのも、仕事上大切なことだ
『そうか・・・・わかった。』
「それじゃ。頼んだわよ。」
俺の真横を通り過ぎる際に椅子に腰掛けたままの俺の耳元に再び顔を寄せて、”またね。” と三宅は囁いた。
その瞬間、鼻を掠めた香り。
それは高貴な百合の花のような香り。
『ホントは早く帰りたいけど、仕方ない。』
伶菜のほんのり甘い果実のような香りとは全く異なる香り
俺はそれに違和感を感じずにはいられない。