ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋
『私も・・・・愛してる。』
彼の耳元で軽くそして甘くそう囁く私。
女優さんってこんな気持ちで演技したりしているのかな?
もう大してスキでもない人に、こんなに簡単に ”愛してる” という甘い言葉を投げかけているんだから
そう思うと女優というお仕事って結構大変そう
「よかった・・・やっと一緒になれるな。」
彼も甘い声でそう呟き、キレイな笑顔を投げかけながら、私の顔を両手で優しく挟み顔を近付けてくる。
ドラマでも見てるみたい
こういうシチュエーションはきっとキスの直前
だから、一応目を閉じてみる
でも、ここ、医局の前なのに
お兄ちゃんが医局の中から出てきたらどうしよう?
まだお兄ちゃんに康大クンが祐希の実の父親だっていうことを話していないのに、キス現場を目撃されるなんてやっぱり良くないよね?
それに、いくら演技とはいえ
スキな人に
スキじゃなくなった人とキスするところとかを見られること
それはやっぱり辛い
『・・・・・・・・・』
私は目を閉じたまま、お兄ちゃん独特のサンダルの擦れる足音が聞こえてこないか、そちらのほうに神経を傾ける。
何も聞こえてこないことに安堵したおかげで、ようやく頭が動き始めた私は、
『康大クン、そういえば今、仕事途中なんじゃ・・・』
今にも降ってきそうなキスをその問いかけで阻止する。
クスッ
「そうだった。俺、ここで営業している生命保険の会社員だしね・・・確かにここではマズイよな。」
彼は鼻先で笑いながら、私の頬を挟んでいた手を離してくれた。
それだけに留まらず、ついさっきまで交わしていたお兄ちゃんとの会話のヒントまで自ら明かしてくれる。