ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋
Reina's eye ケース50:お揃いのキーホルダーだけが知る未来


【Reina's eye ケース50:お揃いのキーホルダーだけが知る未来】





ガチャッ!!!




引越しする当日の朝。

突然鳴った玄関のチャイムの音は緊急コールの患者さんを診ることを終えたお兄ちゃんが帰って来た
・・・そう思って勢い良く開けたドア。


その向こうに居たのは

お兄ちゃんではなく、

「おはよ、伶菜・・・荷物まとまった?」

康大クンだった。



『・・・うん、一応ね。』


この時間に現れるとは思っていなかった見当違いの人物。
その人に一睡もしなかったせいでポッコリと腫れた瞼を見られないようにおでこに手をあてながらそう答えた私。


「もうすぐ引越し屋、来るだろ?お兄さんはいるの?」

特に私の異変に気がついてない様子のカレ。


『ううん、昨日からずっと仕事なの・・・あっ、引越し屋さんが荷物運び出したら戸締りして、ここの鍵をお兄ちゃんに返さなきゃ。』

私は急いで玄関の壁のフックにかけてあった黄緑色のとても小さなヨットが入っているボトルシップのキーホルダーを手に取り、じっと見つめた。



お兄ちゃんの車の鍵にはこれと色違いの、水色のヨットの入ったボトルシップのキーホルダーがついてたっけ・・・

これも大切な想い出のモノ

でも、これはお兄ちゃんから借りていたモノだから
持っていけない



「コレ、凄く精巧に作られたヨットだね・・・俺のマンションに行く前に病院に寄ってお兄さんにコレを渡しに行こうか?俺も一言挨拶しておきたいしね・・・」

彼は私の手の上から勝手にそれを持って行き、手の上でコロコロと転がしながら呟く。


このキーホルダーをお兄ちゃん以外の人に触れて欲しくない
お兄ちゃんと私を繋いでいた大切なモノのひとつだから


『康大クン、鍵。』

「ああっ、コレ?ハイ。」


やや強い口調でそう言いながら右手を彼の目の前に差し出した私に、康大クンは若干驚いた表情を浮かべながらキーホルダーを私の手のひらの上に恐る恐る戻してくれた。
そして、それから暫くして引越し屋さんが現れ、サクサクと荷物を運び終えて先に康大クンのマンションに向かった。
私達も急いで施錠をして鍵を返しにお兄ちゃんが勤務している病院へ足早に向かった。



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