ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋
そんな顔、なぜ今、見せるの?
しかも
それ以上、前に進んだら、お兄ちゃん、危ない
溺れるよ
なんでそんなに前に行こうとするの?
夕日により近づきたいから?
それとも、もしかして
良くないコトを・・・考えてるの?
私が、アナタに出会う直前に、やろうとしたコトを・・・
私を何度でもなんてしてでも救う
そう言ってくれたのに
・・・なんでそうなっちゃっうの?
お兄ちゃんとお父さん、お母さんの大切な想い出の場所で
・・・なんでそうなっちゃうの?
私は抱えていた白衣を放り投げて走り始めていた。
『お兄ちゃん、あぶ、キャッ!』
ジャポンッ!
「伶菜!!・・・大丈夫か?」
まだ、足首までしか水に浸からない場所で私は足を取られ、見事に全身ズブ濡れになってしまった。
そんな私を勢いよく救い上げ抱きかかえてくれたお兄ちゃんも全身ズブ濡れに。
『だって、お兄ちゃん・・・お兄ちゃんが・・・どんどん海の中に入ってしまってたから・・・・死んじゃおうとしてるのかと思って・・』
「そんなコト・・・・」
『お兄ちゃんが死んじゃったら・・・私のコト、祐希のコトを・・・・誰が何度でもなんとしてでも救ってくれるの?私、お兄ちゃんじゃないとイヤなの!!』
突然のお兄ちゃんの行動に驚きと戸惑いを隠せずに、一気に涙が溢れ出してしまう。
「伶菜・・・」
私を抱きかかえたまま、私の瞳の奥までじっと見つめてる彼。
そして私を抱きかかえる彼の腕には更に力が入り、その瞬間、彼の胸が、顔が更に自分に近付いてくる。
そんなに近付くと唇が重なりそう
でも、そんなこと、やっぱりあり得ないよね
お兄ちゃんにはこれからの未来、大切にしたい人がいるんだし
それに
私とお兄ちゃんは兄妹なんだから・・・
「伶菜さん、気をつけたほうがいいよ・・・そいつもかなりの策士だからね・・・・」
『えっ?!』
突然聞こえてきた声。
それは私が全く想像していなかった人物から発せられたものだった。