ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋
私はそれを手に受け取り、蓋を開けると
ぽろぽろ、ぽろ、ろん・・・ぽろ♪
突然、“星に願いを” らしき優しいオルゴールの音色が強い潮風の音にまぎれることなく流れてきた。
ぽろぽろぽろぽろ、、ぽろろーん♪
海風に乗るように二人の間を通り過ぎていく優しい音色。
再び目を閉じてその音に聞き入る。
それども、一瞬、強く吹き付けた海風によってオルゴールの箱の中でカサッと音を立てた揺れた物の存在に気が付き、すぐさま目を開け、それを手に取る。
手に取ったそれは
見覚えのあるあの空色のジグソーパズルのピース3つと
そして
きれいに小さく折り畳まれている白い紙だった。
さっきまでしっかりと丸く見えていた夕日が地平線に半分位姿を隠し、さっきまでオレンジ色だった空に藍色が混ざり始める。
日が暮れて暗くなる前にちゃんと確かめなきゃいけない
そう思ってまずはジグソーパズルを手に取って確かめる。
それらには
それぞれ “T” “S” そして “naofumi” と刻印されていた。
私が初めて手にするそのピース達。
“T” はお父さん・・・高梨拓志の拓志の “T” かな?
そうだったら、“S” はお母さんの名前である詩織の “S” ?
『お兄ちゃんが持っていたんだね・・・』
私は ”naofumi” と刻印された部分を指でそっとなぞりながら呟いた。
「ああ、俺が親父から直接受け取って、ずっと持ってた。お前に渡したピースもな・・・」
背後で私の様子をそっと窺ってくれていたお兄ちゃんも私の手元を覗き込みながらそう答えてくれた。