ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋
「伶菜、何飲む?」
『何にしようかな?』
「アンタ、コーヒー好きだけど、妊婦はカフェイン控えたほうがいいんだよね?ここカフェインレスコーヒーもあるみたいだけどどうする?」
メニューリストを開きながらカフェインレスコーヒーを指差している真里。
私の身体を気遣ってそんな事まで調べていてくれて、そんな真里のささやかな心遣いも私は嬉しかった。
『ありがと。最近、コーヒーよりもホットミルクのほうがいいんだ。』
「ホットミルクね。了解!ちょっとそのまま待ってて!」
真里は急に立ち上がり、コーヒーショップのレジまで足早に駆け寄った。
ショップの店員さんがホットミルクを作っている間、真里はその様子を立ったまま見ている。
でも、彼女は商品が提供されるテーブルと指でトントンと叩いていて。
傍から見ていると彼女が店員を急かしているようにも見えて、こっそりと笑ってしまった。
いつもテキパキ、無駄な時間が生じるのを嫌う真里らしい。
店員さんからホットミルクを受け取った真里はまたもの凄いスピードで私の元へ戻ってきた。
「ハイ!ホットミルク。できたてをど~ぞ♪」
真里はにっこり笑いながらホットミルクの入ったマグカップを私の前に置いた。
『ありがと♪』
私も真里に負けないような笑顔を返す。
「よかった。伶菜、やっと笑った!もっとやつれてるかと思ってたからちょっぴり安心した!」
彼女はちょっぴり冷めてそうなコーヒーを口にしながらホッとした表情を見せた。
私はマグカップと一緒にトレーの上に載っていた砂糖を少しずつ慎重に注ぎ入れ、一口飲んだ。