ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋
Reina's eye ケース7:ホットミルクの謎

【Reina's eye ケース7:ホットミルクの謎】



病院を無事に退院した私は自宅へ戻った。

最後にここに自分が居たのは、自ら命を絶とうとしたあの日。

あの日から2か月ぐらい経つ自宅。
玄関の戸を開けて感じたのは、夏休み明けの学校のちょっと埃っぽい空気に似た感覚。

その中を掻い潜って辿り着いたリビングのローテーブルには見覚えのないメモが置かれていた。


《伶菜、おかえり! 電話で入院したって聞いた時はホント驚いたよ!この前、伶菜の荷物を持って面会に行った時は検査があるって検査室に連れて行かれて全然話出来なかったから・・・
落ち着いたらランチでもしながら詳しく話聞かせて♪
   
PS:鍵はいつものガスメーターの裏に入れといたからね。   真里》


学生時代からの親友である真里が残したメモ。
彼女の筆圧の高い特徴的な文字が綴られているメモを手にした私は、まだしっかりと御礼が言えていなかったことを思い出し、急いで彼女へ電話をかけた。

入院した経緯を聞いて来た彼女に電話越しで泣きながら説明したら、
”なんで相談してくれなかったのよ~。みずくさい・・・” と怒られ
”コーヒー、おごりね。” と早速日時まで約束させられた。

明朗活発な彼女らしい怒り方と約束の取り付け方に苦笑いしながらも
今度は顔を合わせていろいろ報告しよう
そう思った。


そして迎えた真里との約束の日。
真里と私は名古屋駅のツインタワー内にあるコーヒーショップで待ち合わせをしていた。

日曜日だったこともありいつもにも増して人、人、人の大混雑。
座って休む場所を見つけるのも一苦労な状態で、お腹が重く感じるようになった私はそこにいるだけで疲れてしまった。


「伶菜、こっちこっち!」

そんな中、真里が気を利かせて、窓際のテーブル席を確保しておいてくれた。


『ごめん、遅くなって・・・』

「大丈夫!あたしもさっき着いたばかりだからさ。」

真里は椅子に腰掛けた私の荷物を受け取り、やや冷たいお水を差し出してくれた。



< 70 / 699 >

この作品をシェア

pagetop