ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋
Hiei's eye カルテ7+α:暗の木曜日



【Hiei's eye カルテ7+α:暗の木曜日 】



その ”ある時”。

それは伶菜が妊娠8ヶ月の時。


「日詠センセ?」

『・・・・・ん?どうした?』

彼女の経腹エコー検査中、突然、彼女が俺を呼んだ。


「ずっと手が止ったままですが・・・・先生、どうかされたのかな?って。」

『あっ、どうもしてないよ。ちょっと想い出したことがあって。検査中にゴメンな。』

俺はとってつけたような言い訳を口にしながら、エコー画像を保存する。


「いえ、先生が大丈夫ならよかったです。」

『・・だ、大丈夫だ。』

大丈夫という言葉をつい噛んでしまった俺は胎児の全身がキレイに映っている画像のみ選んでプリントアウトした。


『ハイ、これ。』

「ありがとうございます。背骨とかもハッキリ見えるんですね。エコーって凄い!」

『・・・・・・』

「日詠センセ?」

『あっ、またゴメン。次回の予約がいつかを考えてて・・・背骨がなんだっけ?』

また適当な言い訳をする。
本当は次回の予約のことなんか考えてない。


「エコーで赤ちゃんの背骨もハッキリ見えるんですね・・です。」

『・・・そうだね。医療機器の進歩は凄いと思うよ。生まれる前から成長を目で確認できるのは僕らも助かるし。』

エコー検査で生まれる前に確認できるのは
胎児の成長というポジティブな所見だけじゃない
ネガティブな所見だって見つかることはあるんだ



「写真、アルバムにして大切に保管してるので、毎回、楽しみで。いつもありがとうございます。」

『それはよかった。じゃ、また来週。』


でもそれがどういうものなのかを今、触れるワケにはいかない
今はまだ・・・



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