心がささやいている
相手の人はバツイチで子持ち。四歳になる息子が未だ乳児の頃から男手ひとつで育てて来た、しっかり者の子煩悩な人なのだとか。
母が再婚を考えていると祖母の家に報告に来た時、私は久し振りに嬉しそうな母の姿を見た。が、私の顔を見るや徐々に不安の色が見え隠れしはじめ、そうして聞こえて来る『囁き』は、当然再婚後の私の身の振りについてだった。
「おばあちゃんが許してくれるなら…私は、このままこの家に残りたい」
私は母の望むままの答えを口にした。
途端に、あからさまにホッとする母が目の前にはいた。祖母もそれには了承してくれて、私は母たちとは別々に暮らすことになった。
母の幸せを邪魔したくない…と言うのは、正直タテマエ。何より今の状況で新しい家族の中に入ったって、自分は邪魔者でしかないだろうし、頼まれたって行く気なんかなかった。
せめて新しい家族と顔合わせくらい…と食事に誘われたりもしたが、今のところは何だかんだと理由をつけて避け続けている。だから、相手がどんな人なのか私は未だに知らないのだ。
でも正直そんなこと、どうでもいい。
新しい人間関係というものは、どうしても疲れるから。これ以上むやみに広げたくないというのが私の本音だった。それに今更母に余計な気遣いなどして欲しくはない。
気を使うことそのものが悪いことだとは思わない。自分も同じだし。ただ、その裏にある本心をもう聞きたくないのだ。
『建前』の裏にある『本音』など、敢えて知る必要などないものだから。
母が再婚を考えていると祖母の家に報告に来た時、私は久し振りに嬉しそうな母の姿を見た。が、私の顔を見るや徐々に不安の色が見え隠れしはじめ、そうして聞こえて来る『囁き』は、当然再婚後の私の身の振りについてだった。
「おばあちゃんが許してくれるなら…私は、このままこの家に残りたい」
私は母の望むままの答えを口にした。
途端に、あからさまにホッとする母が目の前にはいた。祖母もそれには了承してくれて、私は母たちとは別々に暮らすことになった。
母の幸せを邪魔したくない…と言うのは、正直タテマエ。何より今の状況で新しい家族の中に入ったって、自分は邪魔者でしかないだろうし、頼まれたって行く気なんかなかった。
せめて新しい家族と顔合わせくらい…と食事に誘われたりもしたが、今のところは何だかんだと理由をつけて避け続けている。だから、相手がどんな人なのか私は未だに知らないのだ。
でも正直そんなこと、どうでもいい。
新しい人間関係というものは、どうしても疲れるから。これ以上むやみに広げたくないというのが私の本音だった。それに今更母に余計な気遣いなどして欲しくはない。
気を使うことそのものが悪いことだとは思わない。自分も同じだし。ただ、その裏にある本心をもう聞きたくないのだ。
『建前』の裏にある『本音』など、敢えて知る必要などないものだから。