心がささやいている
それから、約三十分程が経過した頃。


「あっ颯太お帰り!丁度良かった。紹介するねっ。彼女が昨日言ってた月岡咲夜さんだよっ」

辰臣の経営する救済センターの扉をくぐった途端に、にこやかな辰臣の笑顔が颯太を出迎える。そして、その横には少し驚いたように瞳を大きくしている咲夜がいた。
そんな咲夜の様子に気付くことなく、辰臣は人懐っこい笑顔を向けると、今度は身体の向きを変えて咲夜に颯太の紹介を始めた。

「咲夜さん、こっちは僕の幼なじみで親友の幸村(ゆきむら)颯太。昨日、君に会わせたい友人がいるって言ったでしょう。実は、彼のことなんだ。颯太には、ここの仕事も時々手伝って貰ったりしていて、いつもこんな風に顔出してくれてるから既にスタッフみたいなものなんだ。ランボーともどもよろしくねっ」

そう互いに紹介されて、とりあえず二人して顔を見合わせた。

「はじめまして」

複雑そうな顔をしながらもペコリと頭を下げる咲夜に対して、颯太は飄々(ひょうひょう)とした様子で笑顔を向けた。

「…先程はどうも」

そんな颯太の言葉に辰臣がすぐさま反応した。

「え?なに?もしかして二人共もう顔見知りだったりするのっ?」
「いや、そんなんじゃないけど、ちょっとな。ところで、辰兄。俺スタッフになったつもりはコレっぽっちもないんだけど…」
「嫌だなぁ。そんな冷たいこと言わないでよー」
「…ってか、俺の扱いはランボーと同じなわけ?看板犬やマスコットと一緒にするんじゃねぇっての」


目の前で何だかんだとじゃれ合い始めた二人を眺めながら、咲夜は「そういうことだったのか」と、一人納得していた。
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