心がささやいている
『昨日言ってた』ということは、自分のことをこの幸村という人物に話していたということなのだろう。
(どうりで…。知らない顔だと思った…)
自分の記憶違いでなくて安心した。自分が覚えていないだけで何処かで会ったことがあったのだろうか、と少し自信がなかったのだ。
(だって、あんなに普通に話し掛けてくるから…)
実のところ、自分の交友関係などはほぼ無いに等しい。特に高校で絞るとなるとクラスメイトでさえ話したことのない人物ばかりだった。流石に同じクラスの人物の顔と名前くらいは頭に入っているが、本当にそれだけだった。
敢えて深入りしないようにしている自覚はある。もう、思わぬ声を…心の囁きを聞いて憂鬱になどなりたくないから。
自分が臆病になっている自覚も勿論ある。けれど、何より普段から関係をあまり持たずにいる方が聞こえてきてしまった『本音』も重みが減るのは確かなのだ。
そんななので、校内で何かの拍子に出会ったことがあった人物がいたとしても、あまり覚えておける自信はなかった。
目の前で大空さんと笑顔で話している彼を見つめる。
それにしたって、随分と唐突だったのではないかと思う。向こうが話に聞いていて自分を知っていたとしても、こちらは全く面識も何もないのだから。自己紹介も何もなしに突然話し掛けてきたら普通は警戒するだろう。ただ、同じ学校の制服を着ていたので、そこまで不審には思わなかったけれど。
そんなことを考えている内に、部屋の奥から小さな犬がこちらに向かって、ててて…と軽い足取りで走り寄ってきた。そう、ランボーだ。
(どうりで…。知らない顔だと思った…)
自分の記憶違いでなくて安心した。自分が覚えていないだけで何処かで会ったことがあったのだろうか、と少し自信がなかったのだ。
(だって、あんなに普通に話し掛けてくるから…)
実のところ、自分の交友関係などはほぼ無いに等しい。特に高校で絞るとなるとクラスメイトでさえ話したことのない人物ばかりだった。流石に同じクラスの人物の顔と名前くらいは頭に入っているが、本当にそれだけだった。
敢えて深入りしないようにしている自覚はある。もう、思わぬ声を…心の囁きを聞いて憂鬱になどなりたくないから。
自分が臆病になっている自覚も勿論ある。けれど、何より普段から関係をあまり持たずにいる方が聞こえてきてしまった『本音』も重みが減るのは確かなのだ。
そんななので、校内で何かの拍子に出会ったことがあった人物がいたとしても、あまり覚えておける自信はなかった。
目の前で大空さんと笑顔で話している彼を見つめる。
それにしたって、随分と唐突だったのではないかと思う。向こうが話に聞いていて自分を知っていたとしても、こちらは全く面識も何もないのだから。自己紹介も何もなしに突然話し掛けてきたら普通は警戒するだろう。ただ、同じ学校の制服を着ていたので、そこまで不審には思わなかったけれど。
そんなことを考えている内に、部屋の奥から小さな犬がこちらに向かって、ててて…と軽い足取りで走り寄ってきた。そう、ランボーだ。