心がささやいている
その声を聞いた時、もしかしたら鍵の落とし主は、あの子なんじゃないかなと思った。その時点で彼の探し物が何なのかは分からなかったけれど。
(声を…掛けてみようか)
少しだけ迷っていたところに、背中を押す一言が聞こえて来た。
『やっぱ一度家に帰って予備のカギもらってこなくちゃダメかぁ。お母さん、おこるだろうなぁ…』
頭を抱えているその後ろ姿に、とりあえず違ったら違ったで良いか…と、ダメ元で声を掛けたのだけれど。予想通り、あの自転車の鍵はその少年の物で。結果、無事本人へと届けることが出来たのである。
でも、それをどう説明したらいいというのだろう?
説明なんて出来るワケがない。
でも、上手い誤魔化し方も浮かばなかった。
(そもそも、別にどう思われたって関係ない。…ハズなのに…)
何をそんなに悩んでいるのだろう。
「声が…聞こえたから…」
「声?」
結局、ありのままを口にしている自分に心の中で苦笑しつつも。何故だか嘘を吐きたくはなくて、そのまま続ける。
それでも、普通の人なら『声』を普通の口から発声される『声』として認識するだけなのだろうけど。
「何かを探しているみたいだったから声を掛けてみた。そうしたら落とし主本人だった。ただ…それだけ」
自分の心に後ろめたさでもあるのか、思いのほかぶっきら棒な言い方になってしまったけれど、幸村くんはそれを普通に「へぇ」と軽く流すと、何故か面白そうに口端を上げた。
「そりゃまた、ラッキーだな」
「え…?ラッキー?…どういう、意味?」
心の声が聞こえないせいだろうか。彼の表情や言葉の奥に何か意図が含まれているのかどうかも何も解らなくて、妙に不安に駆られている自分がいた。
(声を…掛けてみようか)
少しだけ迷っていたところに、背中を押す一言が聞こえて来た。
『やっぱ一度家に帰って予備のカギもらってこなくちゃダメかぁ。お母さん、おこるだろうなぁ…』
頭を抱えているその後ろ姿に、とりあえず違ったら違ったで良いか…と、ダメ元で声を掛けたのだけれど。予想通り、あの自転車の鍵はその少年の物で。結果、無事本人へと届けることが出来たのである。
でも、それをどう説明したらいいというのだろう?
説明なんて出来るワケがない。
でも、上手い誤魔化し方も浮かばなかった。
(そもそも、別にどう思われたって関係ない。…ハズなのに…)
何をそんなに悩んでいるのだろう。
「声が…聞こえたから…」
「声?」
結局、ありのままを口にしている自分に心の中で苦笑しつつも。何故だか嘘を吐きたくはなくて、そのまま続ける。
それでも、普通の人なら『声』を普通の口から発声される『声』として認識するだけなのだろうけど。
「何かを探しているみたいだったから声を掛けてみた。そうしたら落とし主本人だった。ただ…それだけ」
自分の心に後ろめたさでもあるのか、思いのほかぶっきら棒な言い方になってしまったけれど、幸村くんはそれを普通に「へぇ」と軽く流すと、何故か面白そうに口端を上げた。
「そりゃまた、ラッキーだな」
「え…?ラッキー?…どういう、意味?」
心の声が聞こえないせいだろうか。彼の表情や言葉の奥に何か意図が含まれているのかどうかも何も解らなくて、妙に不安に駆られている自分がいた。