心がささやいている
そうなると夕食まで遅くなったり、最悪の場合夕食までも抜きで疲れ果てて朝まで寝てしまっていたなんてこともあったりした。
困っている人が居ると放っておけない(タチ)。そういう部分は、颯太にとって彼の最も尊敬する部分ではあったが、身内のような立場である颯太にとっては心配の種でもあった。流石に自分の身体も気遣って欲しいと思うのは当然のことだ。その為、敢えて自分が居るこの時間に、半強制的に休憩を取らせることにしたのだ。
もう、流石にいい大人なんだから…とは思うが、こればっかりは仕方ない。その内そんな辰臣のことを理解して、ずっと傍に寄り添ってくれるような人が現れるまでは、自分がその役目を果たしてしまうのかも知れない。

火に掛けたやかんが小さくシュウシュウ鳴り始める音に耳を傾けながら、颯太は慣れた仕草でカップにインスタント珈琲を入れていく。そうして、簡単にお茶菓子をトレーに用意し終えると、そこから見える光景を何とはなしに眺めていた。
給湯室からは、辰臣と咲夜がテーブル横に立ちながら何やら話しているのが見える。咲夜の足元にはランボーがいて、どうやら今日も熱烈な歓迎を受けているようだった。そんなランボーの話題で盛り上がっているのか二人が微笑むのが見えた。

彼女は、こうして見ていると学校で見掛ける印象とはかなり違う。まだ、自分は彼女という存在を認識してから日は浅いが、数日の間でも学校ではあんな風に微笑む姿を見たことはないし、何より人とあまり一緒にいる所を見なかった。逆に他人を寄せ付けないようなオーラを身に(まと)っているようにさえ見える。

それは何故なんだろうと、少しだけ気になっていた。
< 63 / 98 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop