そして、to be continued...

雄大

「え、言ったの?昨日?なんで昨日?」
「……言うつもりじゃなかった……」
「なんだ、それ」
「昨日の飲み会、藤井さんが来てたんだ」
「藤井さん?誰、それ」
「芳子さんの同期。いつもは忙しいって言って来ないのに、昨日は珍しく顔出したんだ。女の子たちが色めき立ってた」
「ああ、あの背の高い人か、思い出した。それで?」
「芳子さんを口説いてた」
「またか。お前は?側にいなかったの?」
「別のテーブルにいた」
「で、ガン飛ばしてたんだろ」
「飛ばしてない。普通に見てた」
「それは飛ばしてるだろ。お前そういう時、凄い目で見てるし。それで?」
「……見てただけ」
「えっ、見てただけ?いつもならさーっと邪魔しに行くところだろ」
「…………似合ってた」
「藤井さんが?」
「……芳子さんはいつもの通りなんにも気にしないんだけど、同期だからかリラックスしてて。藤井さんは、落ち着いてて、大人っぽくて」
「お前2つしか違わないだろ」
「そうだけど、俺だったら年下感満載なのに、藤井さんはそうじゃなくて、対等で、芳子さんも安心してるみたく笑ってて、そしたら藤井さんが、この後もう一軒行こうって誘ってて……」
「はあ……それで?」
「……芳子さんは限界みたいなんでって連れて帰った。実際酔っ払ってたし」
「いつもと同じ光景なんだが」
「そうだよ。だから他の人はみんな、ああまたかよろしくねーって感じで……でも……」
「でも?」
「今までも同じようなことは何回もあったけど、芳子さんがビクともしてなかったから、ある意味安心してたんだ。でも昨日は、藤井さんが本気出したら芳子さんももしかして、って思っちゃって、そしたら芳子さんがコケそうになって、支えたら抱きしめる格好になって、離したくなくて、気が付いたら言ってた……」
「……で、芳子さんは?」
「びっくりしてた」
「まあ……そうなるか……」
「俺のこと、恋愛対象に入れてくれって。入らないんだったら目の前から消えるから、はっきり言ってほしいって言ったんだ。そしたら、消えるのはやだって言われて……」
「……それって、好きってことなんじゃ」
「違う。多分、ただ単に、いつもいたのがいなくなるのが嫌だってだけで、だからって好きとかそういうんじゃない」
「ああそう……」
「だから、とにかく考えてくれってことにして、送ってった……」
「へえ……」
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