死者の幸福〜最期のメッセージ〜
「新婚旅行は行ってないの?」

「ええ。隼人が生まれるのが先だったから……」

そんなことを二人で話していると、「俺も幸せな話、知ってますよ〜」と監察医の河野大河(こうのたいが)がやって来た。

「俺、彼女とバレエを観に行ったんです!ほらあのバレエ団の!!」

「幸せな話ってあんたのノロケ話かよ〜!!」

大河を朝子がつつく。三人は同時に笑った。

大河の観に行ったバレエ団は、一時期世間を騒がせていた。なぜなら、所属するバレエダンサーが謎の死を遂げたからだ。藍たちが調べたところ、ポリオに感染していることがわかった。

「みなさん!仕事を始めますよ〜!!」

所長室の扉が開き、研究所の所長である春川正人(はるかわまさと)が顔を出す。朝子と大河が「は〜い」と返事をして自分のデスクへ戻った。

「あれ?上山くんはまだ来てないんですか?」

正人が部屋を見渡し、言う。新しく研究所に監察医として働いている人の姿がない。その時、扉が開いて「すみません!」と言いながら男性が入ってきた。
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