死者の幸福〜最期のメッセージ〜
「××の山奥にある廃墟で男性の遺体が発見された。捜査員は直ちに現場に急行せよ!」

大輔の顔つきが一瞬にして変わる。それは、父親から刑事に変わった瞬間だった。大輔は原刑事を見つめる。

「行くぞ!」

「はい!」



廃墟で見つかった遺体は、すぐに法医学研究所に送り届けられた。

「さっき解剖が終わったところなのに〜」

朝子がそう言いつつ解剖の支度を始める。藍が大輔に遺体の詳しい状況を訊ねた。

「遺体はどのような状況だったんですか?」

「廃墟に探検に来た人からの通報だった。廃墟の床で倒れている状態で、廃墟で生活していた跡が残っている。遺書などは見つかっていない」

「では、事故か事件か自殺かわからないということですね?」

英二の言葉に大輔は頷く。「解剖しましょう」と大河が言い、藍は「ええ」と言った。

この人の死因を必ず特定する、と藍は拳を握り解剖室へと入った。

台の上に遺体を置く。遺体は、四十代後半ほどの男性だ。ふくよかな体型をしている。
< 8 / 32 >

この作品をシェア

pagetop