旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~

 隆臣が到着したら彼をその部屋まで連れていき、いつも以上に可愛らしくなった佑香さんから、愛の告白をされるのだ。

 彼女自ら考案した決め台詞は、『たっくんの記念すべき三十回目の誕生日プレゼントに、私の人生を捧げます』――だそうだ。

 私が男だったら重すぎて引くな……と正直思ったが口に出すわけにはいかず、『素敵ですね。絶対に成功しますよ』と佑香さんを励ました。……まったく、とんだピエロだ。

 でも、今日ふたりが結ばれるシーンを目の当たりにすれば、いまだに引きずっている隆臣への想いも……いい加減、諦めがつくはず。

 そうしたら観念して、まだまったく進められていない離婚の手続きや、両親への報告をするつもりだ。今日はつらいシーンを見せられることも多いだろうけれど、自分自身が前に進むために、必要なことなのよ……。

 控室の前でひとりウン、と頷き、ドアをノックした。

「佑香さん、お仕度は整いましたか?」

  ……返事がない。聞こえなかったのかな。もう一度ノックして、呼びかける。

「佑香さん?」

< 139 / 151 >

この作品をシェア

pagetop