旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~

 いい加減羞恥に耐えられなくなった私は、力いっぱい腕を突っ張って彼の体を引きはがした。エビはなにを考えているのかわからない飄々とした顔で、私を静かに見つめている。

「ちょ、ちょっと……いくら千葉くんから私を助けるためとはいえ、やりすぎ!」

 そう言って濡れた唇をごしごし手でこすり、エビを睨みつけた。

「……ごめん。でも、むかついたから」
「むかついたって、千葉くんに?」
「そ。まぁでも、説明してない俺も悪いな。というわけで理子、お前、俺と結婚したから」

 サラッと放たれた言葉の意味がよくわからず、呆然とする。

 オマエ、オレトケッコンシタカラ……? イイエ、ワタシアナタトケッコンシタオボエアリマセンケド?

「宇宙人と話してるみたいな顔すんな。こないだ俺んちで書いたろ? 婚姻届。あれを昨日役所に提出して、受理された。つまり、お前は海老名理子になった」
「は……? な、なんでそんなこと……」

 婚姻届を書いたことは覚えている。でも、あれはふざけていただけだ。本気でエビと結婚しようと思ったわけじゃない。

「俺たちが夫婦になるのもアリだって、お前も言ってたじゃん」
「そ、それはあくまで〝気を遣わなくて楽そう〟って意味で……! だって私、アンタのこと恋愛対象として見たことなんて一度も――」

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