旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~
もっと余裕ぶった方が男としてカッコいいのかもしれないが、焦る気持ちを抑えきれなかった。
早く、俺の手の届く距離にきてほしい。もっと触れさせてほしい。そして、恋愛なんか興味のなかった俺が生まれて初めて抱いたこの甘い感情を、惜しみなく注ぎたい。
理子はしばらく唇を噛んで迷うそぶりを見せていたが、やがておずおず顔を上げると言った。
「アンタのことは、人間的に好きだし、尊敬もしてる。……だからって結婚したい相手なのかどうかはまだわかんないけど……」
理子はそこで椅子から立ち上がり、俺の正面に立つと握手を求めるようにスッと右手を出した。
「一カ月……だっけ? やってみる。アンタと夫婦」
「理子……」
感激した俺は、彼女の右手をスルーしてガバッとその体に抱きつき、背中に回した腕にギュッと力をこめた。
「ありがとな。……絶対好きにさせてみせる、俺のこと」
「……うん」
小さくうなずいた理子は、ぎこちなくも俺の胸の中で目を閉じ、静かに俺の温もりを感じているように見えた。