旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~

「すぐにでも俺んちに引っ越してきて? 早く理子と暮らしたい」

 女性に対してこんなに甘いセリフを吐いたのは初めてだ。意識しているわけではないのに、理子の前だと自然にスラスラと口からこぼれてくる。

「でも、親になんて話したら……」
「理子のお母さんには、俺から話してあるから大丈夫。ほら、実家に送っていったあの時だ」

 とはいえ理子にとっては寝耳に水の話。彼女は大きく目を見開き、驚きを隠せない。

「あの時そんな話してたんだ……。お母さん、私にはずっと内緒にしてたってこと?」
「俺が『サプライズで入籍したい』って説明したからな」
「……な、なるほど。にしても、どれだけ用意周到なのよ」

 ようやく納得し始めた理子に、俺は毅然とした口調で尋ねる。

「親がどうとかそんな建前はともかく、理子自身はどうなんだよ。生理的に絶対ムリとか、死んでも俺とは暮らしたくないとか、そこまで言われたら俺だってちょっと考えるけど、そうでないなら……」

 そこで言葉を切り、理子の気持ちを問うように彼女を見つめる。

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