旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~

 その時声をあげたのは、松下くんだった。彼は眼鏡のずれを中指で直してから、意外な発言をした。

「どちらもあります、うちに」
「えっ……?」

 松下くんの家に着ぐるみが? ありがたいけど、なぜ……。

「なんでそんなピンポイントでコブラとマングースの着ぐるみなんか持ってんの?」

 梢ちゃんが怪訝そうに尋ねると、松下くんは少々気まずそうにぼそぼそと説明した。

「別にその二種類だけをピンポイントで持ってるわけじゃない。俺、実はコスプレが趣味で……珍しい衣装や着ぐるみを見つけては買って、実際に着てみた画像をSNSに上げたりしてて」

 ……なんと。クールな彼にそんな趣味があったとは。

「へえ。なんか意外だね。松下くんってあまり目立ちたくなさそうなのに」
「……だからこそ、です。たまに、無性にいつもと違う自分になりたくなる時があって」

 彼はそう言って、なぜか梢ちゃんをちらりと一瞥した。けれど彼女と目が合うとすぐにパッと目をそらし、早口で言う。

「お、俺の趣味はともかく、着ぐるみの心配はいらないので、先に進みましょう」
「そうだね。あとは千葉ラビットだけど……」

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