旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~

 私や他のメンバーは自然と、ぽつんと空席になっている椅子の方を向いた。

 実は千葉くん、今日は無断で欠勤をしているのだ。始業時間になってもオフィスに現れないので、会社の電話から彼の携帯に連絡してみたものの、呼び出し音が流れるばかりで彼が電話に出ることはなかった。

「絶対拗ねてるんですよ、蟹江……いや、海老名さんの結婚のことで」

 仕方なさそうに梢ちゃんが言うと、松下くんと萌子さんもうなずく。

「同感」
「千葉くん、理子ちゃんのこと大好きだからねえ」

 ……いや、いくらなんでもそんなことで無断欠勤はしないでしょう。まだ一年目で未熟な部分の多い千葉くんだって、社会人として最低限のルールくらいは守る……はず。

「わ、私、もう一度連絡してみるね。あと梢ちゃん、私の呼び方は今まで通り蟹江でいいよ。今後も仕事上では旧姓を使うことにしたから」

 その方が職場の混乱もないし、名刺や名札を変更しなくてもいいから色々と楽だろうと、昨日エビと話し合っていたのだ。……結婚とはいっても、期間限定のお試しだし。

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