旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~
「仕事……辞める、そうです」
「えっ」
でもなんで? それも私の結婚のせい? だとしたら……辞めないようにちゃんと説得しないと。
いくら千葉くんが少々世話のかかる後輩でも、今ひとり抜けられるのは困る。それになにより、彼にもわかってほしい。この仕事は大変なこともあるけど、多くの人を喜ばせたり感動させることのできる、やりがいのある仕事なんだってこと。
「私……彼の自宅の住所調べてちょっと行ってきます! 顔見て話してくる!」
「え? 蟹江さん、それはちょっと危ないんじゃ」
「蟹江さんにそういう行動取らせるのが目的だったとしたら、むしろ千葉の思うツボ……」
三年目のふたりがなだめるように言うけれど、千葉くんとじっくり話さなければというのは、このところずっと感じていたことだ。
今までは逃げてしまっていたけれど……今日がきっとそのチャンス。
「じゃ、あとのことはお願いします。必ず千葉くんを引っ張ってきますから!」
力強く宣言し、私は会議室を後にした。オフィスに戻り、課のパソコンでこっそり千葉くんの住所を調べる。